「すべての事実は、一方では感覚に、他方では道徳に関係している。思索という営みは、この二つのうちどちらか一方が現れたときに、もう一方を見出すことにある──上面が与えられたなら、下面を見つけるということである」

- 1803年5月25日~1882年4月27日
- アメリカ合衆国出身
- 哲学者、随筆家、詩人、超越主義運動の指導者
英文
“Every fact is related on one side to sensation, and, on the other, to morals. The game of thought is, on the appearance of one of these two sides, to find the other: given the upper, to find the under side.”
日本語訳
「すべての事実は、一方では感覚に、他方では道徳に関係している。思索という営みは、この二つのうちどちらか一方が現れたときに、もう一方を見出すことにある──上面が与えられたなら、下面を見つけるということである」
解説
この名言は、人間の知的探求における「事実」と「意味」の関係性を哲学的に描いたものである。エマーソンは、いかなる事実も単なる感覚的印象にとどまるものではなく、それには必ず道徳的・精神的な側面が伴っていると述べる。つまり、目に見える現象や体験(感覚)と、それが内包する価値や教訓(道徳)は、表裏一体の関係にあるというのである。
この思想は、エマーソンの超越主義の根幹にある「自然は象徴である」という考えと一致している。彼は、世界に存在するあらゆる事実──たとえば、風景、出来事、人間関係──が単なる物理的現象ではなく、精神的真理や道徳的意味と結びついていると信じていた。したがって、「思索の遊び(game of thought)」とは、見えている現象の背後に隠された意味を探り当てる知的冒険なのである。
現代においても、この名言は深い洞察を与えてくれる。ニュースやデータ、自然現象や日常の出来事に対して、私たちはしばしば表面的な側面だけに注目しがちである。しかし、エマーソンは、事実を「感覚的なもの」としてだけでなく、「道徳的な問い」として見ることを促す。すなわち、目の前の事象にどのような倫理的意味や人間的教訓が潜んでいるのかを問う姿勢こそが、真の知的成熟につながると語っているのである。
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