「一人当千というのは、たった一人で千人に力で立ち向かうという意味ではない。そうではなく、計略をよく用い、動かずして多数を打ち破ることを指すのである」

- 1147年5月9日~1199年2月9日(51歳没)
- 日本出身
- 武将、政治家、鎌倉幕府初代将軍
原文
「一人当千と云ふ事は、一人して千人にはいかでか向ふべき。なれども、はかりごとをよくし、居ながら多勢を滅ぼすを名付けたるなり」
現代語訳
「一人当千というのは、たった一人で千人に力で立ち向かうという意味ではない。そうではなく、計略をよく用い、動かずして多数を打ち破ることを指すのである」
出典
頼朝佐々木被下状
解説
この言葉が示す価値観は、力や勇猛さそのものを称揚するのではなく、知略と判断によって状況を制するという発想にある。真の強さとは肉体的な優位ではなく、情報を集め、局面を読み、最小の行動で最大の結果を得る能力にあるとする考え方である。個の力量は、直接的な衝突よりも構想力によって拡張されうるという見方が、ここには含まれている。
この言葉が発せられた背景には、武力衝突が常態であった時代において、無益な流血を避けつつ権力を確立する必要があったという事情がある。源頼朝は、武勇だけに頼る武士像を相対化し、統治と軍事を両立させるための合理的思考を重視した。そのため、戦場での個人的な奮戦よりも、計画と統率によって勝利を収める姿勢を言葉として示したのである。
現代においてこの考え方は、自由と規律の関係を考える上で重要な示唆を与える。衝動的に行動する自由ではなく、状況を理解し自らを律することでこそ、より大きな自由と成果が得られるという思想である。啓蒙思想が重視した理性による自己統御や、勤労倫理における計画性と持続性とも通じ、自己形成においても、力任せではなく構想と節度によって社会と関わる姿勢の重要性を示している。
「源頼朝」の前後の引用
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