「アメリカにおける黒人が自らの物語を語ることができたのは、音楽においてだけである。アメリカ人がそれを賞賛できるのは、感傷的な保護の感覚が彼らの理解を制限しているからだ」

ジェイムズ・ボールドウィン(画像はイメージです)
ジェイムズ・ボールドウィン(画像はイメージです)
  • 1924年8月2日~1987年12月1日(63歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、評論家、公民権運動家

英文

”It is only in his music, which Americans are able to admire because a protective sentimentality limits their understanding of it, that the Negro in America has been able to tell his story.”

日本語訳

「アメリカにおける黒人が自らの物語を語ることができたのは、音楽においてだけである。アメリカ人がそれを賞賛できるのは、感傷的な保護の感覚が彼らの理解を制限しているからだ」

解説

この言葉は、黒人音楽が果たした役割と白人社会の限定的な受容を指摘している。黒人は奴隷制と差別によって声を奪われてきたが、その苦難や希望を最も強く表現できたのは音楽であった。ゴスペル、ブルース、ジャズといった音楽は、抑圧された歴史を背負いながらも、芸術として昇華されてきたのである。

しかしボールドウィンは同時に、白人社会がその音楽を十分に理解していないことを批判している。「感傷的な保護」とは、黒人音楽を安全で無害なものとして受け取り、本質にある怒りや苦悩を直視しない態度を意味する。つまり、音楽を消費しながらも、その背後にある黒人の現実を認めることを避けていたのである。

現代においても、この洞察は重要である。黒人音楽は世界的に広まり、ポピュラーカルチャーを形づくったが、その根底にある歴史的文脈はしばしば軽視される。芸術の背後にある声を聞くことなくして、その芸術を真に理解することはできないというボールドウィンの警告は、今日の文化の享受においても忘れてはならない教えである。

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