「かつて哲学者の国など存在したことはなく、近い将来に生まれるとも思えない。そして、それが望ましいことなのかどうかも私には確信が持てない」

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1817年7月12日~1862年5月6日
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“There never was and is not likely soon to be a nation of philosophers, nor am I certain it is desirable that there should be.”

日本語訳

「かつて哲学者の国など存在したことはなく、近い将来に生まれるとも思えない。そして、それが望ましいことなのかどうかも私には確信が持てない」

解説

この言葉は、理想主義と現実主義の間で揺れるソローの複雑な視点を表している。一見すると哲学者の国――すなわち思慮深く、理性的で、真理を求める人々が支配する国家――は理想のように思えるが、ソローはそれが現実的でもなければ、必ずしも望ましいものでもないと懐疑的に捉えている。この言葉には、人間社会の多様性と不完全性への受容と、哲学だけでは社会は動かないという直感的理解がある。

この考えは、ソローの個人主義と自然主義に根ざした政治観や倫理観とも結びついている。彼は政府や制度よりも、個々人の良心と実践による生の改善を重視していた。哲学者たちの理論が社会全体を支配するような体制には、人間の感情、弱さ、非論理的な面が排除されすぎる危険性を感じ取っていたのかもしれない。つまり、理性が過剰に社会を支配することへの警戒が込められている。

現代においても、知識人や専門家による統治に対する期待と警戒の両面が存在する。この名言は、知の力の価値を認めつつ、それだけでは人間社会の複雑さには対応しきれないという冷静な洞察を示している。ソローは、理想に酔わず、現実に足をつけて人間の在り方を見つめることの大切さを、この慎み深い一文を通して語っているのである。

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