「若者は、月への橋や、あるいは地上の宮殿や神殿を建てようと材料を集める。だがやがて中年になると、その材料で物置小屋を建てることに落ち着く」

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1817年7月12日~1862年5月6日
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“The youth gets together his materials to build a bridge to the moon, or, perchance, a palace or temple on the earth, and, at length, the middle-aged man concludes to build a woodshed with them.”

日本語訳

「若者は、月への橋や、あるいは地上の宮殿や神殿を建てようと材料を集める。だがやがて中年になると、その材料で物置小屋を建てることに落ち着く」

解説

この言葉は、若者の夢や理想が、年を重ねるにつれて現実的・実用的なものへと変化していく人生の皮肉を描いている。若者が描く壮大な構想――それは宇宙的な理想や芸術的な願望であるかもしれない――は、やがて人生の現実に直面した中年期になると、実利的で制限された目標へと変わってしまう。ソローはこの変化を、人間の希望と妥協、理想と現実の乖離として捉えている。

この名言には、ソロー自身の思想が強く反映されている。彼は社会の慣習や功利主義的な価値観に疑問を抱き、人間が年齢とともに「成熟」という名のもとに理想を手放すことに懐疑的だった。物置小屋(woodshed)とは、生活に必要な最低限の機能を持つ建物であり、かつての壮大な構想とはほど遠い凡庸さの象徴として用いられている。

現代においてもこの言葉は、若い頃に抱いた情熱や夢をどれほど保持し続けられるかという問いを投げかける。社会の圧力や安定志向の中で、多くの人が「橋」や「神殿」を諦め、「物置小屋」を選んでしまう。ソローのこの一言は、理想を追うことの尊さと、それを捨てることの哀しさを同時に語る、鋭くも詩的な人生の観察である。

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