「私が引き受ける権利を持つ唯一の義務は、いついかなる時も、自分が正しいと信じることを行うことだ」

• 1817年7月12日～1862年5月6日
• アメリカ合衆国出身
• 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“The only obligation which I have a right to assume is to do at any time what I think right.”

日本語訳

「私が引き受ける権利を持つ唯一の義務は、いついかなる時も、自分が正しいと信じることを行うことだ」

解説

この名言は、個人の道徳的判断を最上位の規範とする自由主義的な信念を端的に表している。ソローは、社会や権威が押しつける義務に盲従することなく、自己の良心に従って行動することが、唯一正当な義務であると主張する。この言葉には、個人の内面の倫理にこそ、真の行動の根拠があるという強い確信が込められている。

この思想は、ソローの代表的著作『市民的不服従』にその核心が見られる。彼は、国家や制度が不正を行うとき、それに従うことこそが罪であると考えた。たとえば、奴隷制度や不正な戦争に加担する政府に対して、納税を拒否するという行動を取ったことは、個人の良心に従って生きるという信念の実践であった。彼にとって、真の自由とは、正しいと信じる行為を選ぶ権利を放棄しないことに他ならない。

現代社会においても、この名言は鋭い意味を持つ。制度や常識が人々の行動を規定する中で、何が正しいかを外に委ねず、自己の判断に責任を持つことの大切さは失われがちである。たとえば、組織や集団の論理のもとで、良心に反する命令に従うことが求められる場面は少なくない。この名言は、「自分の良心に誠実であることが、人間として最も重要な義務である」という不動の倫理観を私たちに思い出させてくれる。

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