「正義は甘美で調和に満ちているが、不正は耳障りで不協和音である」

• 1817年7月12日～1862年5月6日
• アメリカ合衆国出身
• 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“Justice is sweet and musical; but injustice is harsh and discordant.”

日本語訳

「正義は甘美で調和に満ちているが、不正は耳障りで不協和音である」

解説

この名言は、正義と不正という抽象的な概念を、音楽の調和と不協和という感覚的な比喩を用いて描写している。ソローは、正義のある状態を「音楽」のように心地よく、自然な秩序の中にあるものとし、逆に不正の状態を「不協和音」として人間の感性に反するものと位置づけている。つまり、正義は人間の本性にかなった美しさを持つという直観的な真理を表現している。

この思想は、ソローの超越主義に基づく価値観――すなわち自然、真理、そして内なる良心に従う生活――と調和している。彼にとって正義とは、法や制度によって押しつけられるものではなく、自然界のリズムや心の琴線と一致する「調和」の一形態であった。したがって、不正は単に倫理に反するだけでなく、人間の魂や社会の在り方に「ひび割れ」や「雑音」を生むものとして描かれる。

現代においてもこの名言は非常に共鳴する。たとえば社会的不平等や制度的不正義がもたらす分断は、人々の間に不調和を生み、共感や連帯の音を掻き消してしまう。その一方で、正義に基づいた行為や制度は、社会の中に信頼と共鳴を育む「旋律」のような役割を果たす。この名言は、正義とは理屈ではなく、感覚的に「心地よい」と感じられるものであり、だからこそ追い求めるべき価値であると教えてくれる。

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