「すべての人は影を落とす。それは肉体だけでなく、混じり合いきれていない精神もまた影を落とす。それが彼の悲しみである。どちらを向こうとも、それは太陽の反対側に落ちる――正午には短く、夕方には長く。あなたはそれを見たことがないか」

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1817年7月12日~1862年5月6日
  • アメリカ合衆国出身
  • 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者

英文

“Every man casts a shadow; not his body only, but his imperfectly mingled spirit. This is his grief. Let him turn which way he will, it falls opposite to the sun; short at noon, long at eve. Did you never see it?”

日本語訳

「すべての人は影を落とす。それは肉体だけでなく、混じり合いきれていない精神もまた影を落とす。それが彼の悲しみである。どちらを向こうとも、それは太陽の反対側に落ちる――正午には短く、夕方には長く。あなたはそれを見たことがないか」

解説

この名言は、人間の存在に内在する影(shadow)という概念を、精神的・詩的に描写した深い洞察である。ここでいう「影」とは、単なる物理的な影ではなく、人間の不完全な魂や内面の葛藤、悲しみ、過ちといった否定的側面の象徴である。人は誰しも、自らの意志や光とは裏腹に、逃れることのできない影を常に伴っているというのがソローの見立てである。

「影が太陽の反対側に落ちる」という自然の法則を、人間の心の動きや人生の時間経過に重ねている点も注目に値する。「正午には短く、夕方には長く」という表現は、若い時には気づきにくいが、年を重ねるごとにその影(悲しみや悔恨)はよりはっきりと、そして長く伸びていくことを暗示している。また「Did you never see it?(あなたはそれを見たことがないか)」という問いかけは、読者自身にその影の存在を意識させ、内省を促す詩的装置として機能している。

この名言は、自己認識と受容の重要性を説いているとも解釈できる。自分の影を直視すること――つまり、欠点や過去の選択に向き合うことこそが、成熟や癒しの第一歩であるという普遍的な教えである。現代においても、ポジティブな面ばかりが強調されがちな社会において、影を見つめ、それと共に生きることの尊さを思い出させてくれる、ソローらしい静かな深みを持った名言である。

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