「厳粛な真実を言おう。三位一体の教義は、物理学のいかなる公理よりも、作業仮説としては受け入れやすい」

- 1838年2月16日~1918年3月27日(80歳没)
- アメリカ合衆国出身
- 歴史家、文筆家、政治評論家
英文
”I tell you the solemn truth, that the doctrine of the Trinity is not so difficult to accept for a working proposition as any one of the axioms of physics.”
日本語訳
「厳粛な真実を言おう。三位一体の教義は、物理学のいかなる公理よりも、作業仮説としては受け入れやすい」
解説
この名言は、宗教的信仰と科学的思考の間にある逆説的な難解さを描いている。ヘンリー・アダムズはここで、三位一体というキリスト教神学の象徴的かつ神秘的な教義が、実際の思考や理解においては、物理学の公理よりも受け入れやすいと述べている。つまり、科学的理性で構築された物理法則でさえ、根本的には理解困難な「信じるべきもの」であるという皮肉が込められている。
この発言の背景には、アダムズの科学技術の進展への畏敬と懐疑の両面がある。19世紀末から20世紀初頭、科学は急速に進歩したが、その根本にある「力」や「エネルギー」、「質量と空間の関係」などの公理は、日常的な直観からはかけ離れた抽象概念であった。一方、宗教的教義は、神秘的であっても、長年の象徴体系の中で「納得可能な形」で語られてきたため、心理的にはむしろ受け入れやすいという比較が成立する。
この名言は、現代にも通じる。量子力学や宇宙論の公理は直感に反し、信仰に近い理解を要求する場面がある。アダムズの言葉は、科学もまた一種の信仰体系であることを示唆し、人間の理性が直面する限界と、それを超えて思考する営みの共通性を浮かび上がらせている。これは、宗教と科学を二項対立ではなく、同じ人間精神の表現として捉える深い洞察である。
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