「動物は自己を有しており、その魂はその身体を支配している。しかし彼らは自らの命を欲しないため、その命に対する権利を持たない」

ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1770年8月27日~1831年11月14日
  • ドイツ出身
  • 哲学者、観念論の体系化者、弁証法と歴史哲学の提唱者

英文

“Animals are in possession of themselves; their soul is in possession of their body. But they have no right to their life, because they do not will it.”

日本語訳

「動物は自己を有しており、その魂はその身体を支配している。しかし彼らは自らの命を欲しないため、その命に対する権利を持たない」

解説

この言葉は、動物と人間の違いを意志と権利の観点から論じたヘーゲルの倫理学的命題である。彼は、動物にも自己保存の本能があることを認めながらも、意志としての自覚、すなわち「自己を意図的に生きようとする自由な意思」がない限り、倫理的主体とは見なされないとした。ここでの「権利」とは、単に存在することではなく、理性的存在者が自己の存在を自覚し、選び取る能力を前提とする概念である。

ヘーゲルにとって権利とは、自由の現れであり、その基礎には「自己が自己であることへの意志」が必要とされる。動物は本能によって行動するが、その行動は自己意識的な選択ではない。したがって、彼らは存在していても、それを倫理的に「権利」として主張することはできないというのが彼の立場である。この視点は人間中心的な哲学的立場を示すと同時に、倫理的判断の根源を自由意志に置く思想である

現代の動物倫理においてはこの考えは批判されることも多い。たとえば、動物にも苦痛を感じる能力があり、それだけで倫理的配慮の対象とすべきだという立場がある。しかしヘーゲルの立場からは、倫理的・法的権利の主体となるためには、自由と自己意識が不可欠であるという哲学的前提が崩れない。意志と権利の関係を深く問う命題である

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