「芸術の美は所詮、市民への奉仕の美である。花きちがいの大工がいる。邪魔だ」

- 1909年6月19日~1948年6月13日(38歳没)
- 日本出身
- 小説家
原文
「芸術の美は所詮、市民への奉仕の美である。花きちがいの大工がいる。邪魔だ」
解説
この言葉は、太宰治が芸術の本質を「市民への奉仕」として捉えつつ、自己陶酔的な芸術観を批判したものと解釈できる。芸術は個人の孤高な表現ではなく、最終的には社会や人々に役立つものでなければならないという考えを示している。そこに「花きちがいの大工」という比喩を持ち込み、現実的な役割を放棄して自己満足に耽る芸術家像を風刺しているのである。
太宰の時代、芸術はしばしば「純粋表現」か「社会奉仕」かという議論に引き裂かれていた。彼自身は文学に自己表現を求めつつも、同時に「社会にどう受け入れられるか」に敏感であった。市民から遊離した芸術は結局「邪魔」になるという指摘は、芸術家の孤立や無用感への強い警告でもある。これは、彼の文学観の根底にある「人間への奉仕」とも結びついている。
現代においても、この言葉は重要な示唆を持つ。芸術が自己表現に偏りすぎれば、一般の人々から遠ざかり、共感や影響力を失う。真に生きる芸術とは、市民に対して慰めや気づきを与える奉仕の美であるという太宰の考えは、今日のアートや文化活動においても有効である。彼の皮肉は、芸術の役割を改めて問い直す鋭い批評として今も響いている。
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