「すべての報酬付きの仕事は、精神を奪い、堕落させる」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“All paid jobs absorb and degrade the mind.”
日本語訳
「すべての報酬付きの仕事は、精神を奪い、堕落させる」
解説
この言葉は、アリストテレスの労働観と精神的自由に対する価値観を強く表したものである。彼にとって「仕事(労働)」とは、特に生活維持のために行う肉体的または繰り返し的作業を意味し、それは高貴な精神活動――哲学・政治・芸術・徳の実践――とは異なるものとされた。こうした労働は、魂の自由な活動を妨げ、人間本来の目的である観想的生活を損なうものと見なされた。
アリストテレスがこのように労働を低く評価した背景には、古代ギリシアにおける自由市民と奴隷・職人との社会的区分がある。市民は政治や哲学に従事することで徳を育み、善き生を目指すべきとされた一方で、労働は精神を「吸収し、堕落させる」ほどに魂を拘束するものとされた。つまり、真の人間的完成は、報酬に縛られない自由な知的活動の中にこそ存在するというのが、アリストテレスの根本的思想である。
現代においては、労働の尊厳や自己実現の手段としての働き方が重視されるが、依然として過度な業務負担や機械的作業による精神的疲弊が問題とされている。この名言は、労働が人間の精神に及ぼす影響について省察を促すものであり、内面的自由と充実を実現するために、いかに働き、いかに生きるかを問い直す哲学的視座を与えてくれる。
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