「暴君は、並外れた宗教的敬虔さを装わねばならない。民は、信仰心深く敬虔であると見なす支配者から不法な扱いを受けることに、より警戒心を抱かなくなる。一方で、その支配者が神々の加護を受けていると信じるために、容易には反抗しようとしなくなる」

アリストテレスの名言・格言・警句(画像はイメージです)
アリストテレスの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 紀元前384年~紀元前322年
  • 古代ギリシャのマケドニア出身
  • 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者

英文

“A tyrant must put on the appearance of uncommon devotion to religion. Subjects are less apprehensive of illegal treatment from a ruler whom they consider god-fearing and pious. On the other hand, they do less easily move against him, believing that he has the gods on his side.”

日本語訳

「暴君は、並外れた宗教的敬虔さを装わねばならない。民は、信仰心深く敬虔であると見なす支配者から不法な扱いを受けることに、より警戒心を抱かなくなる。一方で、その支配者が神々の加護を受けていると信じるために、容易には反抗しようとしなくなる」

解説

この名言はアリストテレスの『政治学』における暴政と宗教の利用に関する冷徹な政治分析を示している。彼は理想国家と堕落した政体を分類し、その中で暴君(ティラノス)は自己の権力を維持するために、敬虔さを演出する必要があると指摘する。これは、宗教が人々の信頼と恐れを同時に呼び起こす力を持ち、支配の正統性を演出する有力な手段となるからである。

アリストテレスは、民衆が神々に近い者、神の意志を体現する者と見なす支配者に対しては、たとえその行為が不正であっても、道徳的・宗教的な正当性を感じて抵抗をためらうと述べている。したがって、暴君は実際に徳がある必要はなく、そのように見えることが支配の道具として利用されるのである。

この名言は現代においても、政治権力と宗教的象徴の結びつき、権力者による宗教の道具化といった問題を考察するうえで非常に示唆に富む。アリストテレスはここで、信仰が真に内面的な徳であるのか、それとも統治のための演出に過ぎないのかという倫理的問いを投げかけており、支配と信仰の関係に潜む危うさと策略を鋭く見抜いている。

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