「秘跡の霊的な力は光のようなものである。それが不浄な者の間を通っても、汚されることはない」

アウグスティヌス(画像はイメージです)
アウグスティヌス(画像はイメージです)
  • 354年11月13日~430年8月28日(75歳没)
  • ローマ帝国(現アルジェリア)出身
  • 神学者、哲学者、キリスト教教父、ラテン教父

英文

”The spiritual virtue of a sacrament is like light; although it passes among the impure, it is not polluted.”

日本語訳

「秘跡の霊的な力は光のようなものである。それが不浄な者の間を通っても、汚されることはない」

解説

この言葉はアウグスティヌスの秘跡理解を端的に示すものである。彼にとって秘跡(sacramentum)は、神の恩寵を可視的なしるしを通して与える手段であり、その効力は授ける者や受ける者の不完全さによって損なわれないとされた。この立場は、後にカトリック神学において「ex opere operato(行為そのものによって効力がある)」という秘跡理解の基礎となった。

当時、教会の中では司祭や受礼者の道徳的堕落が秘跡の有効性に影響するのかという論争(ドナティスト論争)があった。アウグスティヌスは、秘跡の力は神に由来するものであり、人間の不完全さに左右されないと主張した。光が汚れに触れてもなお輝きを失わないように、秘跡もまた神の純粋な恩寵を保持するという比喩は、その神学的立場を鮮やかに表している。

現代においても、この言葉は重要な意味を持つ。宗教的な実践や制度が人間の弱さや欠陥を通して行われるとしても、その本質的な価値や霊的な意味は汚されないという考えは、信仰共同体を支える力となる。神からの恵みは人間の不完全さを超えて働くというアウグスティヌスの洞察は、今日でも信仰生活に深い慰めと希望を与えるものである。

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