「国の資本を増加させることによってではなく、本来は眠っているであろう資本のより大きな部分を活発かつ生産的にすることによって、銀行業の最も賢明な運用は国の産業を発展させるのである」

アダム・スミス(画像はイメージです)
アダム・スミス(画像はイメージです)
  • 1723年6月5日~1790年7月17日(67歳没)
  • スコットランド出身
  • 経済学者、哲学者、「古典派経済学の父」

英文

“It is not by augmenting the capital of the country, but by rendering a greater part of that capital active and productive than would otherwise be so, that the most judicious operations of banking can increase the industry of the country.”

日本語訳

「国の資本を増加させることによってではなく、本来は眠っているであろう資本のより大きな部分を活発かつ生産的にすることによって、銀行業の最も賢明な運用は国の産業を発展させるのである」

解説

この言葉はアダム・スミスの銀行制度に関する考察を示している。彼は銀行の役割を単なる資本の増大ではなく、遊休資本を有効に働かせる仕組みに見出した。すなわち、金や貴金属として眠っている資本を銀行が預かり、それを貸し出すことで投資や産業活動に循環させ、国全体の生産力を高めるとしたのである。ここに、銀行を媒介とした資本の効率的利用という近代金融の基礎が見て取れる。

この発想は、18世紀の経済環境において画期的であった。当時、富の象徴とされた貴金属はしばしば非生産的に蓄蔵されていた。スミスは、こうした資本を眠らせておくのではなく、信用と貸付を通じて流動化することが経済成長につながると論じた。これは、重商主義的な単純な蓄積重視から、資本の効率的活用へと視点を転換させるものであった。

現代においても、この考えは金融システムの核心に位置している。例えば、企業や個人が銀行から融資を受けて新たな事業を起こせば、資本は単なる保有物から産業を生み出す原動力へと転換される。しかし同時に、過剰な信用供与はバブルや金融危機を招く危険もある。したがってスミスの言葉は、銀行の適切な運用が経済の発展と安定の鍵であることを今なお教えている。

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