「ひとにものを食わせるというのは、電車でひとに席を譲る以上に、苦痛なものである」

- 1909年6月19日~1948年6月13日(38歳没)
- 日本出身
- 小説家
原文
「ひとにものを食わせるというのは、電車でひとに席を譲る以上に、苦痛なものである」
解説
この言葉は、太宰治が「与える」という行為の難しさと人間の複雑な心理を描き出したものである。電車で席を譲ることは一時の行為であり、比較的簡単に済ませられる。しかし「食べ物を与える」という行為には、金銭や労力の負担、相手への気遣い、さらに自分自身の立場や優越感との葛藤が伴うため、むしろ苦痛を伴うほど難しいと太宰は語っている。
昭和初期の社会においては、貧困や飢えが身近な現実であった。食べ物を与えることは単なる親切以上に、生活そのものを分け与える重大な意味を持っていた。太宰自身も貧窮の中で暮らし、人に施しを受けることや逆に与えることに伴う複雑な心理を知っていた。この言葉は、そうした時代背景と彼の実体験から生まれた実感のこもった表現である。
現代においても、この言葉は共感を呼ぶ。食事を振る舞う、奢るといった行為は、単なる物のやり取りではなく、相手との関係性や自尊心、負担感を含んだ複雑な社会的行為である。太宰の指摘は、人に「与える」ことの難しさを直視させ、同時に人間関係の本質的な重さを改めて考えさせる鋭い洞察となっている。
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