「我々が古美術を称賛するのは、古さを称えるのではなく、自然さを称えるのである」

• 1803年5月25日～1882年4月27日
• アメリカ合衆国出身
• 哲学者、随筆家、詩人、超越主義運動の指導者

英文

“Our admiration of the antique is not admiration of the old, but of the natural.”

日本語訳

「我々が古美術を称賛するのは、古さを称えるのではなく、自然さを称えるのである」

解説

この名言は、美に対する人間の根源的な感受性を鋭く捉えている。古美術や古代の遺物に対する尊敬は、単に時を経たものに対する憧れではなく、人工的ではない素朴さや調和、生命感といった自然本来の在り方への敬意だとエマーソンは述べている。つまり、「古い」ことそのものではなく、「自然であること」こそが感動の源泉なのである。

エマーソンの思想には、自然との一致こそが真理や美の基準であるという考えが通底している。19世紀アメリカにおける急速な近代化と人工化の波に抗するように、彼は自然と人間の直感が調和する状態に真価を見出した。古代の芸術や建築が人々に深い感銘を与えるのは、それが技巧に頼らず、生命と宇宙の秩序に即して作られたからであると理解される。

現代においても、この言葉は芸術・デザイン・建築など多くの分野に通じる。大量生産や表層的な流行が支配する現代にあって、人々が古民家や手作業の品に惹かれるのは、そこに自然と調和した「真実らしさ」を感じるからである。エマーソンのこの名言は、本質的な美とは「自然への回帰」であるという哲学的洞察を、簡潔に言い表している。

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