「私は船室の旅ではなく、むしろマストの前に立ち、世界の甲板に立っていたいと思った。そこでこそ、山々の間に差す月明かりを最もよく見られるからだ。私はいま、船底に降りたくはない」

- 1817年7月12日~1862年5月6日
- アメリカ合衆国出身
- 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者
英文
“I did not wish to take a cabin passage, but rather to go before the mast and on the deck of the world, for there I could best see the moonlight amid the mountains. I do not wish to go below now.”
日本語訳
「私は船室の旅ではなく、むしろマストの前に立ち、世界の甲板に立っていたいと思った。そこでこそ、山々の間に差す月明かりを最もよく見られるからだ。私はいま、船底に降りたくはない」
解説
この名言は、安全で快適な場所に甘んじるのではなく、世界と直接向き合い、困難や自然の壮麗さを肌で感じながら生きたいというソローの決意と人生哲学を象徴している。「キャビンパッセージ」は特権的で守られた生、「甲板の前」は風雨にさらされるが真実に近い生を象徴しており、彼は後者を選ぶと宣言している。
この考えは、『ウォールデン』におけるソローの生活態度と直結している。彼は自然の中での厳しくも自由な暮らしを通じて、本質的な経験と精神的目覚めを追求した。この名言は、表面的な安楽よりも、魂を目覚めさせるような直接的で鮮烈な経験を選び取る勇気を強調している。また「月明かり amid the mountains」は、人知を超えた美と神秘に触れるための象徴であり、それを得るには自らの足で世界の表面を歩むしかないのだと語っている。
現代においてもこの言葉は示唆に富む。便利さや快適さを追い求めるあまり、自らの目と足で世界を体験することを忘れてしまいがちである。ソローのこの言葉は、リスクや不確実性を恐れるのではなく、そこにしか見えない美や真実にこそ価値があるという信念を教えてくれる。そして、それを見に行くためには、「甲板の上」に立ち続ける覚悟が必要であるという、人生の選択に対する深い洞察が込められている。
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