「人の目には、大きなもの、小さなもの、そして中くらいのものがあり、中庸のものが最も優れている。また、目が突出しているもの、奥まっているもの、中間のものがあり、奥まった目を持つ動物は視力が最も鋭い。中間の位置にある目は、最良の性質のしるしである」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“The eyes of some persons are large, others small, and others of a moderate size; the last-mentioned are the best. And some eyes are projecting, some deep-set, and some moderate, and those which are deep-set have the most acute vision in all animals; the middle position is a sign of the best disposition.”
日本語訳
「人の目には、大きなもの、小さなもの、そして中くらいのものがあり、中庸のものが最も優れている。また、目が突出しているもの、奥まっているもの、中間のものがあり、奥まった目を持つ動物は視力が最も鋭い。中間の位置にある目は、最良の性質のしるしである」
解説
この言葉は、アリストテレスが『動物誌(Historia Animalium)』において記した身体的特徴と気質・能力との関係に関する観察を表している。彼は動物や人間の身体的特徴を分類し、それらが生理的機能や性格傾向とどのように関わっているかを論じようとした。特に目の大きさや形状については、視覚の性能や内面の性質との結びつきを示唆している。
アリストテレスは、目が奥まっている動物の方が視力に優れるとしつつも、理想的な気質や徳の指標としては、極端を避けた「中庸の目」が最も優れているとした。これは彼の倫理観における中庸(メソテース)の原理とも一致し、身体の形状においても過剰と不足の中間が最良であるという思想が一貫している。
現代科学の視点からは、生理学的な視力と性格との関連性は疑問視されるが、アリストテレスのこの観察は、身体的特徴を通して性質や機能を理解しようとする古代自然哲学の試みとして重要である。また、「中庸こそ最善」という倫理的・美的理念が、自然観察の中にも貫かれていたことを示す例でもあり、自然と徳の一致を目指す古典的思想の表れである。
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