「誰も、自分が恐れている人を愛することはない」

- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者、科学者、学園「リュケイオン」設立者
英文
“No one loves the man whom he fears.”
日本語訳
「誰も、自分が恐れている人を愛することはない」
解説
この言葉は、アリストテレスが『政治学』や『ニコマコス倫理学』の中で論じた愛と恐れの両立不可能性を端的に表したものである。彼にとって愛は、善や徳を認め合い、相手の幸福を願う関係であり、相互の信頼と尊敬に基づくものでなければならない。しかし、恐れの感情は、相手の力や危害に対する不安や回避本能に根ざすものであり、そこには信頼も親しみも入り込む余地がない。
この考えは、暴政と正義の統治の違いにおいても明確に現れる。アリストテレスは、専制的支配においては人々が支配者を恐れはしても、決して愛することはないと述べ、真の統治者は徳を持ち、愛される存在でなければならないと主張した。愛と恐れが両立しないというこの洞察は、道徳的関係だけでなく、政治的・教育的・家庭的なあらゆる支配関係に適用される普遍的原理である。
現代においても、恐怖による支配や威圧的な権力行使が信頼の欠如や関係性の崩壊をもたらすことは広く認識されている。この名言は、人間関係や組織運営において、愛される存在になるためには恐れさせてはならないという倫理的かつ実践的な指針を与えており、真の影響力とは力ではなく、徳と信頼に基づくものだというアリストテレスの核心的な思想を今に伝えている。
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