「もし確実なことにしか基づいて行動してはならないのなら、宗教にもとづいて行動すべきではない。なぜなら宗教は確実ではないからだ。しかし、我々はどれほど多くのことを不確実なままに行っていることか――航海に出たり、戦争をしたりと」

ブレーズ・パスカルの名言・格言・警句(画像はイメージです)
ブレーズ・パスカルの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1623年6月19日~1662年8月19日
  • フランス出身
  • 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者

英文

“If we must not act save on a certainty, we ought not to act on religion, for it is not certain. But how many things we do on an uncertainty, sea voyages, battles!”

日本語訳

「もし確実なことにしか基づいて行動してはならないのなら、宗教にもとづいて行動すべきではない。なぜなら宗教は確実ではないからだ。しかし、我々はどれほど多くのことを不確実なままに行っていることか――航海に出たり、戦争をしたりと」

解説

この言葉は、パスカルの「神の賭け(le pari)」の論理構造に直結しており、宗教的信仰に行動的合理性を与えるための論点整理である。彼は、神の存在が理性的には証明できないという前提を認めた上で、それにもかかわらず我々は日常的に不確実な状況に基づいて重大な決断をしていると指摘する。宗教に関する行動を「不確かだから避ける」とするなら、同様にリスクを含む行動も否定されるはずだが、現実にはそうではないというわけである。

この発言には、理性だけでは信仰を断じられないというパスカルの宗教的実用主義が表れている。彼は信仰を「賭け」として位置づけ、確実性を待つのではなく、不確実な中でいかに有利な選択をするかが重要であると説いた。航海や戦争のように、完全な保証がなくとも価値ある結果を見込んで行動する人間の現実的姿勢を信仰にも適用することで、信仰の選択を理性の延長として正当化しようとしている。

現代においても、不確実な将来への投資や人生の選択において、「絶対の確信」などないことを前提に行動する場面は多い。この名言は、信仰の是非を論じるにあたり、理性と行動のバランス、そしてリスクと選択の関係性を鋭く照らし出し、宗教を単なる非合理ではなく、実践的判断の領域に引き戻す力を持っている。

感想はコメント欄へ

この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?


申し込む
注目する
guest

0 Comments
最も古い
最新 高評価
インラインフィードバック
すべてのコメントを見る