「いかなる努力も惜しまず、何らかの才能によって自らを際立たせよ。ただし、一つの分野にのみ没頭してはならない。あらゆることについて明確な理解を得るよう努めよ。どんな学問も完全に捨ててはならない。なぜなら、学問とは本来一つのものであるからだ」

- 紀元前1年頃~紀元65年
- ローマ帝国出身
- 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
- ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。
英文
“Shun no toil to make yourself remarkable by some talent or other; yet do not devote yourself to one branch exclusively. Strive to get clear notions about all. Give up no science entirely; for science is but one.”
日本語訳
「いかなる努力も惜しまず、何らかの才能によって自らを際立たせよ。ただし、一つの分野にのみ没頭してはならない。あらゆることについて明確な理解を得るよう努めよ。どんな学問も完全に捨ててはならない。なぜなら、学問とは本来一つのものであるからだ」
解説
この言葉は、人間は何かに卓越する努力を惜しむべきではないが、同時に広い視野を持ち、知の全体性を忘れてはならないというセネカの学問観・人間観を鮮やかに表している。ストア派哲学は、理性をもって世界を理解し、徳をもって生きることを理想とするが、そのためには多様な知識を統合し、全体としての「理(logos)」に近づく努力が必要であるとされる。
セネカは、専門性を深めることの価値を否定しないが、知の偏りや一面的な見方は人間としての完成を妨げると警告している。ここで言う「science(学問)」は、現代の自然科学に限らず、哲学・倫理・文学・歴史などを含む広義の知識全体を指しており、それらは本質的に連関し合う一つの知的営みであるとする視点が表れている。
現代社会においても、専門性の深化と教養の広がりとのバランスは重要な課題である。セネカのこの名言は、一芸に秀でることと全体的な人間理解を両立せよという普遍的な教訓を与えてくれる。知は分断されるものではなく、つながり合う一つの全体であるという意識こそが、真に賢い生き方へと導く。この哲学的視座は、知的誠実さと探究の勇気を私たちに思い出させる。
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