「本当の戦争は決して本の中には記されない」

- 1819年5月31日~1892年3月26日
- アメリカ合衆国出身
- 詩人、随筆家、ジャーナリスト
英文
”The real war will never get in the books.”
日本語訳
「本当の戦争は決して本の中には記されない」
解説
この言葉は、戦争の真実と記録の乖離を示している。戦争の記録は、歴史書や軍事報告として残されるが、それらは多くの場合、勝者の視点、政治的意図、または検閲によって形作られる。戦場での兵士たちの苦悩や、民間人が味わう日常的な恐怖、混乱、破壊の実感は、文字に置き換えると大きく削ぎ落とされるのである。この言葉は、書かれた歴史の限界と、実際に体験した者だけが知る現実の重みを強調している。
この発想は、南北戦争後のアメリカにおいて特に意味を持つ。19世紀の歴史記述は英雄譚的であり、国家の統合や正義の物語に収斂する傾向があった。しかしホイットマンのような詩人は、戦争詩や看護体験を通じ、戦場での負傷兵や死の現実を目にしていた。そのため彼にとって「本当の戦争」とは、書物の中で語られる戦術や勝敗の記録ではなく、泥まみれの兵士や絶望する民衆の生々しい姿であったといえる。
現代においてもこの言葉は有効である。戦争は映像や記事で即座に伝えられる時代になったが、実際の痛みや恐怖は依然として完全には伝わらない。報道は断片的であり、SNSの証言も時間や文脈を欠くことが多い。したがって、戦争を理解するためには、記録に頼るだけでなく、そこに隠された「書かれない現実」にも思いを馳せる必要がある。この言葉は、歴史や報道を批判的に受け止め、見えない人々の苦悩に想像力を働かせることを促すものである。
感想はコメント欄へ
この名言に触れて、あなたの感想や名言に関する話などを是非コメント欄に書いてみませんか?
「ウォルト・ホイットマン」の前後の名言へ
申し込む
0 Comments
最も古い