「愛する者は誰しも謙虚になる。愛する者は、いわば自己愛の一部を質に入れているのだ」

ジークムント・フロイトの名言
ジークムント・フロイトの名言
  • 1856年5月6日~1939年9月23日
  • オーストリア帝国(現在のチェコ)出身
  • 神経科医、精神分析学者、思想家
  • 精神分析学の創始者として知られ、無意識、夢分析、エディプス・コンプレックスなどの概念を提唱。20世紀の心理学、文学、哲学に多大な影響を与えた。

英文

“Whoever loves becomes humble. Those who love have, so to speak, pawned a part of their narcissism.”

日本語訳

「愛する者は誰しも謙虚になる。愛する者は、いわば自己愛の一部を質に入れているのだ」

解説

この名言は、愛とは自己中心性の放棄を伴う行為であり、愛することで人は自然と謙虚にならざるを得ないという、フロイトの人間理解に基づいた深い洞察を示している。彼は、すべての人間が自己愛(ナルシシズム)を持っており、それが心の安定や自己価値の源であるとする一方で、誰かを深く愛するということは、その自己愛を一部手放し、他者に投資することであると捉えた。

この視点は、精神分析における「リビドーの移動」という理論に関連している。すなわち、自己に向けられていた愛情(リビドー)を、他者に向けて注ぐことによって、人は愛するという行為を成立させる。その際、自分の心の一部を他者に明け渡すような不安定さや脆弱性が生まれ、それが謙虚さ、あるいは従属的な態度の源となる。愛に伴う自己犠牲や羞恥、不安もまた、このナルシシズムの一部喪失によるものである。

現代においても、恋愛や親子関係、友情における深い愛情には、自分のプライドや自己防衛を一時的に下ろさねばならない瞬間がある。この名言は、愛するとはただの感情ではなく、自己の一部を差し出す覚悟を伴う行為であるという、人間の心理的真実を簡潔に、しかし鮮やかに表現している。

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