「文明人は馬車を作ったが、自分の足の使い方を忘れてしまった」

ラルフ・ワルド・エマーソンの名言・格言・警句(画像はイメージです)
  • 1803年5月25日~1882年4月27日
  • アメリカ合衆国出身
  • 哲学者、随筆家、詩人、超越主義運動の指導者

英文

“The civilized man has built a coach, but has lost the use of his feet.”

日本語訳

「文明人は馬車を作ったが、自分の足の使い方を忘れてしまった」

解説

この名言は、文明の進歩による人間の退化という逆説的な真実を突いている。エマーソンは、技術や利便性の向上が、人間本来の能力や感覚の衰退を招く危険性を示唆している。馬車(coach)は、移動を容易にする文明の象徴であるが、それに頼り切ることで人間は本来自分に備わっていた能力――この場合は「歩く力」――を失ってしまうという批判である。

この言葉には、エマーソンの自然との調和と自己依存(self-reliance)を重んじる思想が色濃く表れている。彼は、人間が便利さを追い求めるあまり、自然や身体との直接的なつながりを失うことを危惧していた。文明は外的には発展をもたらすが、内的には精神や肉体の衰えを招く可能性があるという、深い懸念がここにある。

現代社会においてこの名言は一層の重みを持つ。自動車やスマートフォン、AIの発達により、人間の基本的な力――記憶、計算、移動、対話、観察など――が次第に退化していることが指摘されている。エマーソンのこの言葉は、技術に依存するほどに人間性の核心を失っていく危険を警告し、文明と人間の本質とのバランスを取り戻す必要性を訴える永続的なメッセージである。

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