「20世紀、ドイツとヨーロッパの歴史における最も暗い時代に、ネオ異教主義から生まれた狂気の人種差別的イデオロギーが、ヨーロッパのユダヤ人を絶滅させようとする体制による計画的かつ体系的な試みに至った。その結果は、歴史にショアー(ホロコースト)として刻まれている」

- 1927年4月16日~2022年12月31日(95歳没)
- ドイツ出身
- ローマ教皇(在位2005年~2013年)、神学者、枢機卿
英文
”In the 20th century, in the darkest period of German and European history, an insane racist ideology, born of neopaganism, gave rise to the attempt, planned and systematically carried out by the regime, to exterminate European Jews. The result has passed into history as the Shoah.”
日本語訳
「20世紀、ドイツとヨーロッパの歴史における最も暗い時代に、ネオ異教主義から生まれた狂気の人種差別的イデオロギーが、ヨーロッパのユダヤ人を絶滅させようとする体制による計画的かつ体系的な試みに至った。その結果は、歴史にショアー(ホロコースト)として刻まれている」
解説
この言葉は、ナチス体制によるホロコーストを歴史的かつ神学的に位置づけた表現である。ベネディクト16世は、ヨーロッパ文明の深い危機の中で、人種差別という狂気の思想が政治体制に取り込まれ、ユダヤ人絶滅計画として実行された事実を強調している。ここで「ショアー」というユダヤ人自身の用語を用いることで、その悲劇を普遍的記憶として尊重していることが分かる。
特に「born of neopaganism」という言葉は、ナチズムがキリスト教的価値から断絶し、生命や人間尊厳を否定する擬似宗教的イデオロギーに基づいていたことを示す。単なる政治的事件ではなく、倫理と信仰を拒絶した精神的退廃が生んだ大惨事であると理解されている。これは宗教的伝統が失われた時に人類が陥る危険を警告する意味を持つ。
現代においてこの言葉は、人種差別や反ユダヤ主義の再興に対する強い警鐘としても重要である。歴史の記憶を風化させず、同じ過ちを繰り返さないためには、教育と対話を通して人間の尊厳を守る努力が必要である。ベネディクト16世の発言は、ホロコーストを忘却せず、倫理と信仰の基盤を取り戻すことが人類全体の課題であると示している。
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