「愛の神は常に渇望の状態にある。それは欲求であり、衝動であり、恒常性の乱れである。飢えや渇きのように、それを消し去ることはほとんど不可能なのだ」

プラトン
プラトンの名言
  • 紀元前427年~紀元前347年
  • 古代ギリシアのアテナイ(アテネ)出身
  • 哲学者、学者、アカデメイア(アカデミー)の創設者
  • ソクラテスの弟子で著作に『国家』や『饗宴』などがあり、イデア論や哲人政治などの概念で西洋哲学に大きな影響を与えた

英文

”The god of love lives in a state of need. It is a need. It is an urge. It is a homeostatic imbalance. Like hunger and thirst, it’s almost impossible to stamp out.”

日本語訳

「愛の神は常に渇望の状態にある。それは欲求であり、衝動であり、恒常性の乱れである。飢えや渇きのように、それを消し去ることはほとんど不可能なのだ」

解説

この名言は、愛という感情が人間にとって本質的かつ避けがたいものであることを示している。プラトンは「愛」を単なる感情以上の存在と捉え、それを「神」になぞらえているが、ここで重要なのは、愛が根本的な「渇望」として表現されている点だ。愛は人間の生理的な欲求と同様に、常に満たされることを求め、強力な衝動として人間の行動を支配する。この不均衡が私たちの内なる動力となり、人生に深い意味を与えるのだ

プラトンは対話編『饗宴』の中で、愛の本質を哲学的に探求している。彼の視点では、愛(エロス)は単なる情熱や欲望にとどまらず、真理や美の追求へと向かう人間の根源的な衝動である。しかし、この衝動は決して完全に満たされることがない。つまり、愛は常に渇望する存在として私たちの内に息づいており、それこそが私たちを成長へと駆り立てるエネルギーとなるのである。この点において、愛は「飢え」や「渇き」と同じように切実なものであり、完全に消し去ることは不可能だとプラトンは考えたのだ。

現代の心理学においても、プラトンのこの考えは興味深い示唆を与える。たとえば、愛や親密な関係に対する欲求は人間の基本的な社会的ニーズとして認識されている。ハーバード大学の研究でも、長期的な幸福感には良好な人間関係が不可欠であることが証明されており、この点で愛は確かに生存本能に結びついていると言える。愛されたい、他者と深くつながりたいという感情は、孤独や不安を緩和し、幸福をもたらす要因となる。プラトンが指摘する「恒常性の不均衡」は、こうした人間の本質的な欲求と結びついているのである。

この考えを具体例で説明すると、恋愛における渇望感が分かりやすい。恋に落ちたとき、人は相手のことを考えずにはいられず、常にその存在を求めてしまう。これは、ドーパミンなどの神経伝達物質が影響しているが、根本には「渇望」というプラトンの言葉に通じるものがある。恋愛の初期段階では、相手への執着や欲求が強く、理性を圧倒するような体験をすることがあるだろう。これはまさに、愛が「飢えや渇き」のような力強い欲求であることを示している。

愛は人間の自己実現に深く関わる要素でもある。たとえば、親が子どもに注ぐ愛情は、子どもの心理的な発達に大きな影響を与える。愛情を受けて育つことで、子どもは安心感を持ち、自己肯定感を高め、健全な人間関係を築く力を養う。一方、愛が欠如した環境に育った場合、自己肯定感が低くなり、人間関係の構築に苦労することが多い。プラトンの言う「愛の神の渇望」は、こうした人間の生存と成長に直結する根源的な欲求として捉えられるのだ。

結局のところ、プラトンのこの言葉は、愛が人生の不可欠なエネルギーであり、人間をより高次の存在へと導く力であることを教えてくれている。愛の追求が時に苦しく、悩ましいものであっても、それこそが人間に与えられた神聖な使命とも言えるだろう。このように、愛は私たちの中に宿る強力な衝動として、人生を豊かにし、意味づける存在である。

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