「詩を作るより田を作れと云う。詩人にして産を成したものは古今を傾けて幾人もない。ことに文明の民は詩人の歌よりも詩人の行を愛する」

- 1867年2月9日~1916年12月9日(49歳没)
- 日本出身
- 小説家、評論家、英文学者
原文
「詩を作るより田を作れと云う。詩人にして産を成したものは古今を傾けて幾人もない。ことに文明の民は詩人の歌よりも詩人の行を愛する」
解説
この言葉は、詩や文学といった創作活動よりも、現実的な生産や行動を重んじる社会の風潮を述べたものである。「詩を作るより田を作れ」は、抽象的・芸術的な活動よりも、直接生活を支える実利的な仕事を優先すべきだという価値観を表す。そして「詩人にして産を成したものは古今を傾けて幾人もない」とは、詩人として生計を成り立たせた例が歴史的にも極めて少ないという事実を指している。さらに「文明の民は詩人の歌よりも詩人の行を愛する」とは、言葉よりも行動によって社会に価値をもたらす人物こそ評価されるという現実を示している。
この背景には、明治期日本の近代化と実利主義の高まりがある。産業化や経済発展が優先される時代において、詩や芸術の価値は軽視されがちで、特に文明国とされる社会では、創作の美しさよりも行動や成果が重視される傾向が強かった。漱石はこの状況を、皮肉と現実認識の両面から描き出している。
現代においても、この指摘はなお有効である。芸術や文学は精神的価値を提供するが、実利的成果や社会的行動に比べれば評価されにくい場面が多い。漱石のこの言葉は、創作活動の尊さを認めつつも、社会的評価の現実とその限界を冷静に見据えたものである。
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