「原子爆弾は、将来の戦争という見通しを耐えがたいものにした。我々を最後の数段の坂を登らせ、峠の向こうには、異なる国が広がっている」

- 1904年4月22日~1967年2月18日
- アメリカ合衆国出身
- 理論物理学者、科学行政官、教育者
- マンハッタン計画において原子爆弾の開発を主導し、「原爆の父」と呼ばれる。戦後は核兵器の規制と倫理的責任を訴え、冷戦下の科学と政治の関係に深い影響を与えた。
英文
“The atomic bomb made the prospect of future war unendurable. It has led us up those last few steps to the mountain pass; and beyond there is a different country.”
日本語訳
「原子爆弾は、将来の戦争という見通しを耐えがたいものにした。我々を最後の数段の坂を登らせ、峠の向こうには、異なる国が広がっている」
解説
この言葉は、原子爆弾の出現によって人類が根本的に新しい時代に突入したという、ロバート・オッペンハイマーの象徴的な認識を表している。彼は核兵器の誕生を、過去の延長線上では捉えきれない文明の転換点と見なしていた。「山の峠」という比喩は、科学と戦争の発展によって人類が限界点に達したことを示しており、その先にはこれまでとはまったく異なる現実が待っているという予見が込められている。
「将来の戦争の見通しが耐えがたいものになった」という一節には、核戦争がもたらす破滅的な帰結に対する深い恐怖と倫理的警告が込められている。もはや戦争は国家間の手段ではなく、人類全体の生存そのものを脅かす選択となってしまった。そしてそのような時代においては、従来の政治、軍事、科学の枠組みでは通用しない新たな価値観と制度が必要になるという洞察が「異なる国」という言葉に込められている。
この言葉は現代においても深い意義を持つ。核兵器の拡散、AIの軍事利用、気候変動の進行など、技術的飛躍が新たな「峠」を生み続けている。オッペンハイマーのこの比喩は、技術の進歩がもたらす「越えてはならない一線」をどう見極め、どう越えるのかという人類全体への問いであり、科学と倫理が交差する場に立つ者すべてが直面すべき運命の岐路を暗示しているのである。
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