「古代ローマが現在のドイツ人やフランス人の祖先を、今日の『優越人種』の代表がスラブ民族を見下すのと同じように見ていたことは、よく知られている。古代ローマは彼らを『劣等人種』、『野蛮人』と見なし、『偉大なるローマ』という『優越人種』に永遠に従属する運命にあると考えていた。そして、ここだけの話だが、古代ローマにはそう見なすだけの理由が多少はあった。しかし今日の『優越人種』の代表に、同じような正当性があるとは言えない」

- 1878年12月18日~1953年3月5日
- グルジア(ジョージア)出身
- ソ連共産党書記長(最高指導者)、ソ連邦大元帥
英文
“It is well known that ancient Rome looked upon the ancestors of the present-day Germans and French in the same way as the representatives of the ‘superior race’ now look upon the Slav races. It is well known that ancient Rome treated them as an ‘inferior race,’ as ‘barbarians,’ destined to live in eternal subordination to the ‘superior race,’ to ‘great Rome’, and, between ourselves be it said, ancient Rome had some grounds for this, which cannot be said of the representatives of the ‘superior race’ of today.”
日本語訳
「古代ローマが現在のドイツ人やフランス人の祖先を、今日の『優越人種』の代表がスラブ民族を見下すのと同じように見ていたことは、よく知られている。古代ローマは彼らを『劣等人種』、『野蛮人』と見なし、『偉大なるローマ』という『優越人種』に永遠に従属する運命にあると考えていた。そして、ここだけの話だが、古代ローマにはそう見なすだけの理由が多少はあった。しかし今日の『優越人種』の代表に、同じような正当性があるとは言えない」
解説
この言葉は、ナチス・ドイツの人種優越思想を歴史的な比較によって批判するスターリンのレトリックである。彼は、古代ローマがゲルマン人やガリア人を「劣等人種」とみなし、支配の対象とした事実を引き合いに出し、当時のローマには一定の文明的優位という根拠があったが、現代の「優越人種」思想にはそのような根拠がないと皮肉を込めて断じている。
この発言は1934年の第17回党大会で行われたものであり、当時の国際情勢――特にナチス政権の成立と反スラブ主義の台頭――を背景としている。スターリンはここで、スラブ民族を標的とする差別思想を歴史的に相対化し、ナチスの人種理論を滑稽で根拠のないものとして突き崩す狙いを持っていた。加えて、過去に「野蛮」とされた民族が後に歴史を動かした事実を想起させることで、被抑圧民族の誇りと団結を鼓舞している。
現代においても、この発言は人種的優越をうたう思想や政策の空虚さを歴史的視点から批判する方法として有効である。歴史を持ち出すことで、現在の差別や偏見が普遍的・永続的な真理ではなく、時代によって変わる相対的なものであることを示す警句として読むことができる。
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