「作家であるジラスは、人間の苦しみや人間の心というものがわからないのか? 血と炎と死をくぐり抜けて何千キロも進軍してきた兵士が、女と戯れたり、些細な物を取ったりするのを、なぜ理解できないのか?」

- 1878年12月18日~1953年3月5日
- グルジア(ジョージア)出身
- ソ連共産党書記長(最高指導者)、ソ連邦大元帥
英文
“Does Djilas, who is himself a writer, not know what human suffering and the human heart are? Can’t he understand it if a soldier who has crossed thousands of kilometers through blood and fire and death has fun with a wench or takes some trifle?”
日本語訳
「作家であるジラスは、人間の苦しみや人間の心というものがわからないのか? 血と炎と死をくぐり抜けて何千キロも進軍してきた兵士が、女と戯れたり、些細な物を取ったりするのを、なぜ理解できないのか?」
解説
この発言は、ユーゴスラビアの共産主義者であり作家でもあったミロヴァン・ジラスに対してスターリンが放ったとされる一言であり、戦争中の兵士による略奪や性暴力の問題をめぐるスターリンの姿勢を示す発言として広く知られている。ここでスターリンは、前線兵士の行為を「人間的な欲望」として擁護し、批判を非現実的・非人間的だと退けている。
この言葉の根底には、兵士の苦しみや犠牲に対する「代償としての免罪」という論理がある。だがそれは同時に、軍による暴力や非人道的行為を事実上容認する立場であり、戦時における倫理と国家指導者の責任という点で重大な問題をはらんでいる。スターリンは、戦争の現実を理由に、行為の正当化を試みているが、それは被害者の視点や人道原則を顧みない<態度とも言える。
現代においてこの発言は、戦時の人権侵害に対する国家や軍指導部の対応のあり方を考えるうえで重要な資料である。苦難を理由に暴力を正当化してはならないという普遍的な倫理と、権力者がそれをどう扱うかの危険性を端的に示す、極めて警鐘的な発言である。
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