「人間の戦争とは何か――それは、神と自然の法則を一方の側に味方させようとする試みにほかならない」

- 1817年7月12日~1862年5月6日
- アメリカ合衆国出身
- 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者
英文
“What is human warfare but just this; an effort to make the laws of God and nature take sides with one party.”
日本語訳
「人間の戦争とは何か――それは、神と自然の法則を一方の側に味方させようとする試みにほかならない」
解説
この名言は、戦争という行為の本質を冷徹に暴き出すソローの洞察を示している。彼は、戦争とは単なる軍事的衝突ではなく、各陣営が自らの正義を「神聖なもの」として正当化しようとする知的・道徳的欺瞞の営みであると看破している。つまり、人間は自分たちの都合のために、神や自然という普遍的な真理を都合よく引き寄せようとするのである。
この批判は、ソローの根本的な信念――真理や正義は個々の政治的勢力に従属しないという立場に基づいている。彼は『市民の反抗』でも、国家や法に従うよりも、自らの良心と自然法に従うことを優先すべきだと述べている。戦争における「神の名の利用」や「自然の摂理に従う戦い」といった表現に対して、それは本来中立であるはずのものを政治的に利用しているにすぎないという痛烈な批判が込められている。
現代においても、戦争や紛争の多くは、宗教、歴史、自然権といった「絶対的正義」を争うかのように見える。しかしこの名言は、その「正義」はしばしば人間が作り出した幻想であり、神や自然の名を借りて行う暴力の正当化であると指摘する。真の道徳や真理は、どちらか一方のためにあるのではなく、人間の行動そのものに問われるべきものだという、ソローの厳しくも透徹した倫理観がここに示されている。
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