「芸術家とは、人間や自然の天才の業を観察し、そこに潜む法則を見抜いて応用する者である。職人とは、他者が見出した規則をただ用いる者である」
- 1817年7月12日～1862年5月6日
- アメリカ合衆国出身
- 作家、思想家、詩人、超越主義哲学者、自然と個人主義の擁護者
英文
“The Artist is he who detects and applies the law from observation of the works of Genius, whether of man or Nature. The Artisan is he who merely applies the rules which others have detected.”
日本語訳
「芸術家とは、人間や自然の天才の業を観察し、そこに潜む法則を見抜いて応用する者である。職人とは、他者が見出した規則をただ用いる者である」
解説
この名言は、創造の本質と、それに携わる者の質の違いを明確に区別するソローの鋭い認識を表している。彼は「芸術家（Artist）」を、自然や人間の卓越した業の中に内在する法則や本質を見抜き、自らの表現として再構成できる者とし、一方「職人（Artisan）」は、既存の知識や手法を繰り返す技術者にすぎないと定義している。
この区別は、ソローの超越主義的な思想――すなわち、自然や宇宙に内在する真理を直感的・観察的に掴むことが人間の使命であるという理念にもとづいている。芸術家とは、単なる技能者ではなく、世界の深層に触れ、それを言葉・絵画・音楽などの形で可視化する者である。逆に、法則をなぞるだけの創造は、模倣に過ぎず、精神的な自由や革新には至らないとされる。
現代においてもこの名言は重要な意味を持つ。教育や産業の場では「正解のある作業」ばかりが求められがちであり、独自の観察と解釈から新しい価値を生み出す力が軽視されやすい。しかしこの言葉は、真の創造とは、既存の知識に頼らず、観察と洞察によって世界を自らの目で捉えなおすことから始まると教えてくれる。芸術的精神とは革新と直観の産物であり、それを持つ者こそが世界に新たな光を投げかけることができるという、強い信念に満ちた名言である。
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