「報道機関は金権体制の雇われた手先であり、その利害が関わるところでは嘘をつくために設けられている。それゆえ誰も何も信じることはできない」

ヘンリー・アダムズ(画像はイメージです)
ヘンリー・アダムズ(画像はイメージです)
  • 1838年2月16日~1918年3月27日(80歳没)
  • アメリカ合衆国出身
  • 歴史家、文筆家、政治評論家

英文

”The press is the hired agent of a monied system, and set up for no other purpose than to tell lies where their interests are involved. One can trust nobody and nothing.”

日本語訳

「報道機関は金権体制の雇われた手先であり、その利害が関わるところでは嘘をつくために設けられている。それゆえ誰も何も信じることはできない」

解説

この名言は、報道の中立性や信頼性に対する徹底的な不信を表明した、ヘンリー・アダムズらしい辛辣な批判である。彼は「the press(報道機関)」を、公共の利益を代表する存在ではなく、「monied system(金権体制)」=資本や権力に従属する存在と断じている。その役割は真実の報道ではなく、利害関係が生じたときにそれを隠蔽・偽造することにあるという、極めてシニカルな認識が示されている。

アダムズは、19世紀末のアメリカにおいて急速に発展した資本主義・企業利権・政財界の癒着を厳しく批判していた。新聞や雑誌はその影響下にあり、ジャーナリズムは次第に広告主や政治権力の機嫌をうかがう存在となっていった。このような背景の中で、彼は「誰も何も信じられない」という絶望的な結論に至るが、それは市民が真実に接する手段を失うことの危険性を強く警告するものである。

現代においても、メディアの偏向報道、情報操作、フェイクニュースといった問題は絶えず議論されている。アダムズのこの名言は、報道が公共の信頼を得るには独立性と誠実さをいかに保たねばならないかを改めて考えさせる。そして同時に、情報の受け手である市民にも、常に批判的思考と検証の姿勢が求められるという、民主主義における重大な責任を突きつけている。

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