「マルクス・レーニン主義の学習において導いてくれる指導者がいなかった私は、理論家にすぎなかった。そして当然のことながら、私はソ連を全面的に信頼していた」

- 1926年8月13日~2016年11月25日
- キューバ出身
- 革命家、政治家、弁護士
英文
“Without a tutor to help me in the study of Marxism-Leninism, I was no more than a theorist and, of course, had total confidence in the Soviet Union.”
日本語訳
「マルクス・レーニン主義の学習において導いてくれる指導者がいなかった私は、理論家にすぎなかった。そして当然のことながら、私はソ連を全面的に信頼していた」
解説
この言葉は、フィデル・カストロが自身の思想的出発点と初期の限界、そしてソ連への信頼を率直に語った自己反省的な発言である。カストロは革命家としての実践を重んじたが、同時に理論面においては、初期には独学的な側面が強く、マルクス主義・レーニン主義の体系的理解には時間を要したと認めている。この告白は、理論と実践の接続に苦労しながらも、それを乗り越えて革命を成し遂げた政治家としての誠実さを示している。
「ソ連を全面的に信頼していた」という表現は、冷戦期におけるイデオロギー的帰属と地政学的現実の双方に根差したものである。当時のキューバはアメリカの敵対政策に直面しており、経済・軍事・外交の全般でソ連の支援を受けていたため、その信頼は現実的選択でもあった。しかしこの発言は、後の時期に見られるカストロの対ソ批判や自主独立路線の布石とも読み取ることができ、思想的成熟の過程を語る重要な証言でもある。
現代においてこの言葉は、思想や信念の形成がいかに複雑な学びと関係性の中で育まれるか、また外部への信頼と自立のバランスがどれほど政治的に重要かを教えてくれる。カストロのこの発言は、指導者とて学びの途上にある存在であり、思想とは経験と批判を通じて深まるべきものであるという、知的謙虚さと誠実さを示す貴重な言葉である。
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