「思考はそのようにして絶えず問題を生み出し、それを解決しようとする。しかし解決しようとすればするほど、自らが問題を作り出していることに気づかないため事態を悪化させ、考えれば考えるほどさらに多くの問題を生み出す」

デヴィッド・ボーム(画像はイメージです)
  • 1917年12月20日~1992年10月27日(74歳没)
  • アメリカ合衆国出身(後にイギリスに帰化)
  • 理論物理学者、哲学者

英文

”Thought is constantly creating problems that way and then trying to solve them. But as it tries to solve them it makes it worse because it doesn’t notice that it’s creating them, and the more it thinks, the more problems it creates.”

日本語訳

「思考はそのようにして絶えず問題を生み出し、それを解決しようとする。しかし解決しようとすればするほど、自らが問題を作り出していることに気づかないため事態を悪化させ、考えれば考えるほどさらに多くの問題を生み出す」

解説

この言葉は、人間の思考そのものが問題の源泉となる逆説的な性質を指摘している。デヴィッド・ボームは量子論の哲学的考察と並行して、人間社会における葛藤や混乱の根本原因を思考の働きに見いだしていた。思考は状況を整理し解決に導くはずのものだが、同時に自己強化的なループを作り出し、より複雑で深刻な問題を生むというのである。

歴史的に見れば、この構図は多くの事例で確認できる。経済政策において、短期的な不況対策が長期的な不均衡を生み、さらなる危機を招くことがある。あるいは国際紛争でも、恐怖からの軍備拡張が相互不信を高め、解決どころか緊張を増幅させる。解決のための思考が問題を再生産するという指摘は、社会や政治の領域に広く適用可能である。

現代においては、個人のレベルでもこの言葉は重要である。過度の心配や分析が不安を強化し、心理的な負担を増やすことはよくある。ボームの指摘は、思考の限界を自覚し、問題に対処するには単なる思考の連鎖から一歩離れる必要があることを示唆するものである。この洞察は、哲学的にも実践的にも深い意味を持ち続けている。

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