「人間が社会の状態に入るやいなや、自らの弱さを自覚しなくなり、平等は失われ、そして戦争の状態が始まる」

シャルル・ド・モンテスキューの名言
シャルル・ド・モンテスキューの名言
  • 1689年1月18日~1755年2月10日
  • フランス王国出身
  • 哲学者、法学者、政治思想家
  • 『法の精神』において三権分立を提唱し、近代憲法や民主主義理論に大きな影響を与えた。啓蒙時代を代表する思想家として、自由と法の支配の重要性を説いた。

英文

“As soon as man enters into a state of society he loses the sense of his weakness; equality ceases, and then commences the state of war.”

日本語訳

「人間が社会の状態に入るやいなや、自らの弱さを自覚しなくなり、平等は失われ、そして戦争の状態が始まる」

解説

この名言は、人間社会の成立が、同時に不平等と対立を生み出す契機となるという深い社会哲学的洞察を示している。モンテスキューは、自然状態における人間は互いに弱く、平等であるが、社会を形成し始めると力の分配が生じ、優劣と野心が発生することで、争いと戦争が不可避となると論じている。ここでの「戦争の状態」とは、単に武力衝突ではなく、権力・富・地位をめぐる持続的な競争と緊張の状態を指す。

この思想は、ルソーやホッブズといった他の社会契約論者の議論と対比して理解することができる。ホッブズは自然状態を「万人の万人に対する闘争」とし、ルソーは社会が不平等を生んだと批判したが、モンテスキューは自然状態に一定の平等と自制の要素を認めたうえで、社会の成立そのものが新たな闘争を生むと見た点で独自性がある。彼は『法の精神』で、社会制度や法はこの「戦争の状態」を制御するために存在すべきだと考えていた

現代においても、個人や国家が力や資源を手に入れるとき、それが競争や紛争を引き起こすという構図は変わらない。この名言は、社会の進歩が必ずしも平等と平和を保証しないという警告であり、制度と倫理がなければ文明そのものが争いの温床になりうるという啓蒙的な洞察を私たちに伝えている。社会化の裏には、権力の非対称と対立の種が潜んでいる

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