「科学の虚しさ。苦難の時に、自然科学の知識は道徳の無知を慰めてはくれないが、道徳の知識は自然科学の無知を常に慰めてくれる」

- 1623年6月19日~1662年8月19日
- フランス出身
- 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者
英文
“Vanity of science. Knowledge of physical science will not console me for ignorance of morality in time of affliction, but knowledge of morality will always console me for ignorance of physical science.”
日本語訳
「科学の虚しさ。苦難の時に、自然科学の知識は道徳の無知を慰めてはくれないが、道徳の知識は自然科学の無知を常に慰めてくれる」
解説
この言葉は、人間の幸福や救いにとって何が本質的に重要かを問うパスカルの倫理観を表している。彼は自然科学に精通しながらも、科学的知識が人間の苦悩や倫理的問題を解決する力を持たないことを痛感していた。そして、苦しみや死といった人生の根源的な問題に直面したとき、必要とされるのは道徳や信仰の力であると確信していた。
この思想は、17世紀の合理主義と信仰の対立という時代背景の中で形成されたものである。パスカルは、自然界の法則を理解することに価値を認めつつも、それだけでは人間の意味や生の目的を示すことはできないと考えた。だからこそ、彼は『パンセ』の中で繰り返し、魂の平安と神との関係の回復こそが人間にとって真の慰めであると説いたのである。
現代でも、科学の進歩が人類の多くを物質的に豊かにしながらも、倫理的・精神的空虚を埋めきれない状況は続いている。この名言は、どれほど知識があっても、道徳と意味の土台がなければ人は苦難に耐える力を持たないという教訓を語りかけている。そしてそれは、科学と人間性の調和を模索する現代社会への普遍的な問いかけでもある。
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