「力のない正義は無力であり、正義のない力は暴政である」

• 1623年6月19日～1662年8月19日
• フランス出身
• 哲学者、数学者、物理学者、キリスト教神学者

英文

“Justice without force is powerless; force without justice is tyrannical.”

日本語訳

「力のない正義は無力であり、正義のない力は暴政である」

解説

この言葉は、正義と力の相互依存関係を明快に表現している。パスカルは、正義が道徳的に正しくとも、実行のための力を欠いていれば現実社会では無力に終わることを指摘している。一方で、力があってもそれが正義に裏打ちされていなければ、それは単なる抑圧や暴力であり、正義ではなく暴政と化す。この二者のバランスがなければ、社会秩序は成立しない。

この洞察は、彼の時代の絶対王政や宗教戦争の混乱を背景としており、理性と道徳の追求だけでは秩序が保てず、力による統治がしばしば乱用されるという現実を踏まえたものでもある。彼は、正義と権力が一致することの困難さを認めつつ、それでもそれを目指さねばならないという人間社会の倫理的課題を提起している。

現代においても、法の支配や人権の保護、国家権力の正当性といった議論の中でこの言葉は大きな意味を持つ。倫理的正当性を欠いた暴力や権力の行使がいかに危険であるか、そして理想だけでは現実を変えられないという現実主義的な視点を、この名言は鋭く突きつけている。正義を力によって支え、力を正義によって制限するという理念は、普遍的で今なお必要な政治哲学の原則である。

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