「なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩かれるのであろう?」

- 1892年3月1日~1927年7月24日
- 日本出身
- 小説家、評論家
原文
「なぜ軍人は酒にも酔わずに、勲章を下げて歩かれるのであろう?」
解説
この名言は、軍人が「酔わずに勲章を下げて歩く」という姿に、皮肉と疑念を込めて問いかけたものである。ここで言う「酒に酔わずに」とは、比喩的に、戦争や栄誉に対する陶酔や狂気に巻き込まれることなく、冷静なまま勲章を誇る姿勢を指しているとも解釈できる。一方で、芥川はそのような冷静さや誇示的態度に、人間的な感情の不在や、過剰な形式主義への批判を込めているのである。
芥川は一貫して、戦争や権威、勲章といった制度的栄光に対して懐疑的なまなざしを向けていた。この言葉は、そうした象徴を掲げる軍人の姿に対し、なぜそのような「常識的な態度」を保てるのか、良心の呵責や狂気に陥らずに済むのかという、人間性の深層にわたる問いでもある。それは、戦争による死や暴力の現実を知っているはずの者が、平然と栄誉を帯びて歩けることへの倫理的違和感を突くものである。
現代においても、この名言は響きを失わない。形式的な栄誉や肩書が、人間の実質や痛みを覆い隠してしまうことへの警告として、また「英雄」の物語の裏にある暴力と苦悩に目を向けるべきだという呼びかけとして、重い意味を持つ。芥川のこの問いは、栄光の裏側にある人間の複雑さを見逃すなという冷徹な知性の結晶である。
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