「降伏は許されない。第6軍は最後の一人、最後の一発まで持ち場を守り、その英雄的な忍耐によって、防衛戦線の確立と西欧世界の救済に忘れがたい貢献を果たすであろう」

- 1889年4月20日~1945年4月30日
- オーストリア=ハンガリー帝国出身
- ナチス・ドイツの政治指導者
英文
”Surrender is forbidden. Sixth Army will hold their positions to the last man and the last round and by their heroic endurance will make an unforgettable contribution toward the establishment of a defensive front and the salvation of the Western world.”
日本語訳
「降伏は許されない。第6軍は最後の一人、最後の一発まで持ち場を守り、その英雄的な忍耐によって、防衛戦線の確立と西欧世界の救済に忘れがたい貢献を果たすであろう」
解説
この発言は、1942年から43年にかけてのスターリングラードの戦いにおいて、第6軍が絶望的な状況に追い込まれていたときに、アドルフ・ヒトラーが発した命令の一部とされる内容である。ここでは、「降伏の禁止」「最後までの戦闘」「英雄的忍耐」という表現により、完全な服従と自己犠牲を要求するナチスの軍事倫理が浮き彫りになっている。
第6軍は、パウルス元帥の指揮のもと、スターリングラードでソ連軍に包囲され、補給も援軍も絶たれた中で戦闘を続けた。ヒトラーは彼らに撤退や降伏を一切許さず、むしろ「西欧文明の守護者」としての宗教的・歴史的使命を課した。だが実際には、この命令は数十万人にのぼる兵士の死傷や捕虜をもたらし、軍事的には完全な敗北、戦略的にも壊滅的な損失となった。
この発言が象徴するのは、政治的理念や「文明防衛」という大義の名の下に、現場の現実や人命を無視する非合理的命令がいかに悲劇を生むかという歴史的教訓である。現代においても、国家や組織が「名誉」「使命」「大義」といった言葉で無謀な戦いを強いるとき、その背後にある犠牲と責任を冷静に問う視点が必要である。ヒトラーのこの言葉は、指導者の狂信がもたらす破滅的帰結の象徴として、記憶されるべきである。
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