「私は哲学からこのことを得た。すなわち、他の人々が法律への恐怖からのみ行うことを、私は命令されずとも行う」
- 紀元前384年~紀元前322年
- 古代ギリシャのマケドニア出身
- 哲学者・科学者で学園「リュケイオン」の設立者
- プラトンの弟子で、論理学、生物学、政治学、倫理学などにおいて体系的な知識を構築し、西洋の思想や科学の発展に大きな影響を与えた
英文
”I have gained this from philosophy: that I do without being commanded what others do only from fear of the law.”
日本語訳
「私は哲学からこのことを得た。すなわち、他の人々が法律への恐怖からのみ行うことを、私は命令されずとも行う」
解説
この言葉は、哲学がもたらす内面的な倫理と自律の力についてアリストテレスが述べたものである。彼は、哲学の探究によって得られる理解や知識が、単なる外的な強制力や法の命令に依存することなく、自ら進んで道徳的な行動を取る力を与えてくれると考えた。つまり、哲学的な思索を通して、人は内面的な正しさや倫理を理解し、それに基づいて行動するようになるため、他者が法律を恐れて守る行動を自発的に行うことができるという意味である。
この考え方には、内在的な動機と外在的な強制力の違いが含まれている。多くの人が法の罰を恐れて行動を制御する一方で、哲学に基づいた行動は、外部の罰に依存せず、自分の内面から生まれる判断や倫理によって導かれる。哲学的な理解は、人間の内なる知恵や理性を目覚めさせ、自己の行動に対する責任感を育む。この内在的な動機があることで、法の命令がなくとも、自ら進んで正しい行動を選ぶことができる。
具体例として、日常生活や仕事における倫理的な判断が挙げられる。例えば、職場での誠実さや責任感は、罰則や監視がなくとも自らの倫理観に基づいて発揮されるべきものである。これが、哲学の教えに基づく内在的なモラルによる行動であり、他者が強制されて行う行動を自主的に行うことができる。同様に、ボランティア活動や慈善行為も、外的な義務や報酬ではなく、自らの価値観や倫理に基づいて行うことでより意味が深まる。
現代においても、このアリストテレスの考え方は非常に重要である。多くの規則や法がある社会で、自発的な倫理感や内面的な正しさを持つことが、個人や社会の成長に繋がる。法律やルールがすべての行動を規制することは不可能であり、人々が哲学や倫理的な理解を通じて、正しい行動を選ぶ力を持つことが、社会全体の安定や調和をもたらす。
アリストテレスのこの言葉は、哲学が持つ自律的な行動の力と、それがもたらす内在的な倫理の重要性を示している。哲学的な教養を通じて、他者が外部の強制によって行う行動を、自らの内なる判断によって行うことができるようになる。このような内面的な倫理が、長期的な幸福と社会の調和に貢献することを教えている。
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