「善は積極的な実在である。悪は単なる欠如にすぎず、絶対的なものではない。熱の欠如としての寒さのようなものだ。すべての悪は、死か無に等しい。慈愛は絶対的かつ真実のものである。人が持つ慈愛の量だけ、その人は生を持つのだ」

- 1803年5月25日~1882年4月27日
- アメリカ合衆国出身
- 哲学者、随筆家、詩人、超越主義運動の指導者
英文
“Good is positive. Evil is merely privative, not absolute: it is like cold, which is the privation of heat. All evil is so much death or nonentity. Benevolence is absolute and real. So much benevolence as a man hath, so much life hath he.”
日本語訳
「善は積極的な実在である。悪は単なる欠如にすぎず、絶対的なものではない。熱の欠如としての寒さのようなものだ。すべての悪は、死か無に等しい。慈愛は絶対的かつ真実のものである。人が持つ慈愛の量だけ、その人は生を持つのだ」
解説
この名言は、善と悪の本質に対するエマーソンの哲学的見解を明快に示している。彼は、「善(Good)」を実在し肯定的な力として位置づけ、「悪(Evil)」をそれとは対照的に、欠如や不在にすぎないものとして捉えている。寒さが熱の欠如であるように、悪は善の欠如に過ぎず、独立した力ではなく、真の実体を持たない影のような存在として定義されている。
この思想は、プラトン的・キリスト教的伝統における「悪は非存在である」という立場と一致しており、エマーソンはこれを超越主義の倫理観として再解釈している。特に、「benevolence(慈愛)」を「absolute and real(絶対的かつ実在のもの)」とした点において、精神的・道徳的価値の根源が善意や愛にあることを強く主張している。そして「so much life hath he(人は持つ慈愛の分だけ生きている)」という句によって、生とは単なる生命維持ではなく、いかに他者に善をなすかによって測られるものであると断言する。
この名言は現代においても、倫理の基準や人間の価値をどこに見出すべきかという問いに対して根源的な視座を与える。たとえば、暴力や憎悪が蔓延する現代社会において、「悪」とは何かを問うとき、それは善の不在によって生じる空白であるという理解は、対立ではなく充足によって問題を解決する道を示している。エマーソンのこの言葉は、人間が善を体現することでこそ、真に生きることができるという、精神的な生の定義を与える名言である。
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