「現代の国家は、未来の敵が誰かも分からないまま戦争の準備をしている」

- 1870年2月7日~1937年5月28日
- オーストリア出身
- 精神科医、心理学者
英文
“Our modern states are preparing for war without even knowing the future enemy.”
日本語訳
「現代の国家は、未来の敵が誰かも分からないまま戦争の準備をしている」
解説
この言葉は、国家の安全保障政策に対するアドラーの批判的視点を示している。戦争準備が本来「防衛」の名のもとに行われるべきものであるにもかかわらず、誰を敵とするかすら明確でない段階で武力を増強する行為は、心理的には恐怖や不信の投影である。アドラーは、人間同士の対立と同様に、国家間の対立も誤った予測や過剰な防衛本能によって悪化すると考えた。
こうした姿勢の根底には、相互信頼の欠如と優越性を示そうとする衝動がある。敵がいないにもかかわらず「敵が現れるかもしれない」という想定で武力を整備することは、他国に対する挑発的シグナルともなりうる。結果として、それが真の敵意や対立を生み出す自己成就的予言となる可能性がある。このような思考様式は、アドラーの理論における劣等感とその過剰補償にも通じる。
現代においても、軍事予算の増大や武力誇示が国際緊張を高める傾向にある。アドラーのこの言葉は、恐れに基づく行動が、平和ではなく対立を招くという根源的な洞察を提供している。真の安全保障とは、見えない敵に備えることではなく、信頼と協力の土壌を築くことであるという哲学的警告として読むべきである。
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