「技術的に魅力的なものを目にしたとき、人はまずそれを実現してしまい、どう扱うかについての議論は技術的成功を収めた後にようやく始まる。それが原子爆弾のときに起きたことだった」

- 1904年4月22日~1967年2月18日
- アメリカ合衆国出身
- 理論物理学者、科学行政官、教育者
- マンハッタン計画において原子爆弾の開発を主導し、「原爆の父」と呼ばれる。戦後は核兵器の規制と倫理的責任を訴え、冷戦下の科学と政治の関係に深い影響を与えた。
英文
“When you see something that is technically sweet, you go ahead and do it and you argue about what to do about it only after you have had your technical success. That is the way it was with the atomic bomb.”
日本語訳
「技術的に魅力的なものを目にしたとき、人はまずそれを実現してしまい、どう扱うかについての議論は技術的成功を収めた後にようやく始まる。それが原子爆弾のときに起きたことだった」
解説
この言葉は、技術的探究の快感と倫理的判断の乖離を鋭く突いた、ロバート・オッペンハイマーの自己批判的な回想である。「technically sweet(技術的に甘美)」という表現は、科学者が困難な問題を解決できたときの知的快楽を示しており、倫理的制約や社会的責任を後回しにしてしまう危うさを暗示している。
彼が「原子爆弾がそうだった」と語るように、マンハッタン計画では技術的挑戦の魅力が科学者たちを突き動かし、破壊力の行使という道を突き進ませた。この言葉には、知識の進歩が必ずしも人類の幸福につながるわけではないという深い懸念と、科学の暴走を食い止めるには技術開発の段階から倫理的視点が必要であるという含意がある。
現代においても、この問題はきわめて現実的である。AI開発、遺伝子操作、量子コンピューティングなど、「技術的に魅力的な」分野では、成果の実現が優先され、社会的・倫理的議論が後追いになる構図が繰り返されている。オッペンハイマーのこの言葉は、科学の自由とその責任の両立を図るために、いつ議論すべきかという根本的な問いを我々に突きつけているのである。
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