「戦争においては、次点に賞はない」

ルキウス・アンナエウス・セネカの名言
ルキウス・アンナエウス・セネカの名言
  • 紀元前1年頃~紀元65年
  • ローマ帝国出身
  • 哲学者、政治家、劇作家、倫理思想家
  • ストア派哲学の代表的人物として知られ、道徳と内面の自由を重視する思想を展開。皇帝ネロの教育係を務めた後、政治から退き著述に専念し、多くの書簡や悲劇作品を通じて後世の倫理思想やキリスト教思想にも影響を与えた。

英文

“In war there is no prize for runner-up.”

日本語訳

「戦争においては、次点に賞はない」

解説

この言葉は、戦争という極限状況においては勝敗がすべてであり、敗者には栄誉も救済も存在しないという厳しい現実を表している。セネカがこのような言葉を語ったとされる背景には、ローマ帝政期の熾烈な権力闘争と、敗北者が徹底的に排除される政治文化がある。戦争とは、あらゆる道徳的配慮や中間的な評価が無力化される世界であり、勝利以外は無に等しいという冷徹な事実がこの名言に凝縮されている。

セネカ自身は、ストア派として平和や理性を重んじた人物であったが、同時に現実の権力闘争や軍事的衝突の非情さを深く理解していた。したがってこの言葉は、戦争を推奨するものではなく、むしろその非情さと非人間性を明示することによって、いかに戦いが破壊的かを警告しているとも読める。敗北した者には言い訳も再挑戦も許されないという戦争の絶対的構造が、皮肉を込めて語られている。

現代においても、競争社会や国際紛争の中で「勝者がすべてを得る」という価値観が支配的な場面がある。セネカのこの言葉は、勝利至上主義の過酷さを映し出すと同時に、それゆえにこそ戦争の回避と理性の重要性を浮かび上がらせる勝つことだけが意味を持つ世界の非情さを理解することが、真の倫理的判断へとつながるという、深い哲学的警鐘がこの短い一文に込められている。

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