「戦争の筋(すじ)は無限の金である」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”The sinews of war are infinite money.”
日本語訳
「戦争の筋(すじ)は無限の金である」
解説
この言葉は、戦争の継続と勝利には戦術や兵力以前に、膨大な資金力が必要であるという現実的な洞察を示したキケロの言葉である。ここで「sinews(筋)」とは比喩的に、戦争という巨大な機構を支える不可欠な要素、すなわち「金銭的資源」を意味している。キケロは、いかに高邁な理念があろうとも、それを実行するためには経済的基盤が不可欠であるという、現実主義的な視点を明快に表現している。
この発言は、彼の政治的立場やローマ共和国末期の内戦と経済混乱の中で培われた実体験から生まれたものである。キケロは、国家運営や軍事行動における財政の重要性を熟知しており、理念だけで国を動かすことの限界と、貨幣力の支配力を痛感していた。この言葉は、戦争とは精神論や戦術だけで語れない、冷厳な経済力の競争でもあるという本質を鋭く突いている。
現代においてもこの格言は極めて示唆的である。軍事衝突においても、実際の勝敗を左右するのは装備、補給、兵站、そして何よりも持続的な資金力であり、それは国家の経済力や政治的体制と直結している。ウクライナ戦争や中東紛争など、近年の事例でも、長期的な戦争遂行能力の鍵を握るのは財政支援と資源の持続性である。キケロのこの言葉は、戦争の本質と国家の力学を冷静に見つめるリアリズムの格言として、今もなお鋭い真理を語っている。
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