「愛とは、美に触発されて友情を結ぼうとする試みである」

紀元前106年1月3日~紀元前43年12月7日
ローマ共和国出身
政治家、弁護士、哲学者、雄弁家
共和政ローマを代表する弁論家・思想家として知られ、ラテン文学とローマ法の発展に多大な影響を与えた。政治的混乱の中で共和政の理想を擁護し、著作を通じて西洋政治思想と修辞学に大きな遺産を残した。
英文
”Love is the attempt to form a friendship inspired by beauty.”
日本語訳
「愛とは、美に触発されて友情を結ぼうとする試みである」
解説
この言葉は、愛と友情、そして美の関係性に対するキケロの哲学的理解を表現している。彼は、愛とは単なる感情や欲望ではなく、美しさへの感動をきっかけとして、より高次の精神的結びつきである友情へと昇華しようとする営みであると定義している。ここで言う「美」とは、単なる外見ではなく、魂の気高さや品性、徳といった内面的価値を含んだ美である。
この思想は、プラトン哲学の影響を受けた愛の観念とも通じている。プラトンにおいても、エロース(愛欲)はやがて魂の美、真理、善への探求へと導く原動力となる。キケロはこの考えを、より実践的・社会的な「友情(amicitia)」の概念と結びつけ、美を感じる心が他者との徳に基づく関係を築く出発点となると説いた。したがって、愛は本来、友情を求める知的・道徳的な志向を含んでいると捉えられる。
現代においてもこの定義は示唆に富む。恋愛を一時的な感情や欲望に留めるのではなく、相手との深い理解と信頼に基づく友情へと昇華させていく営みとして捉えるならば、キケロの言葉は人間関係に深みを与える指針となる。たとえば、夫婦関係や長年のパートナーシップにおいて、互いの内面の美を尊重し、友情を築く努力こそが愛の持続の鍵となる。キケロのこの言葉は、愛という感情の背後にある知性と徳の働きを再発見させてくれる。
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