「このようにあれこれを証明することは、ほとんどずるをしているように思えた。どこかから始め、暗いトンネルに入り、そして別の場所から出てくる。証明したいことを証明できたと気づくが、そのトンネルの中では何も見えていないのだ」

ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
ヴェルナー・ハイゼンベルク(画像はイメージです)
  • 1901年12月5日~1976年2月1日(74歳没)
  • ドイツ出身
  • 物理学者、ノーベル物理学賞受賞者

英文

”This proving of such and such I found to be almost like cheating. You start somewhere, and then you go into a dark tunnel, and then you come out at another place. You find that you have proved what you wanted to prove, but in the tunnel, you don’t see anything.”

日本語訳

「このようにあれこれを証明することは、ほとんどずるをしているように思えた。どこかから始め、暗いトンネルに入り、そして別の場所から出てくる。証明したいことを証明できたと気づくが、そのトンネルの中では何も見えていないのだ」

解説

この言葉は、数学的あるいは理論的な証明に伴う不透明さや直観との断絶を表している。形式的には正しい証明を経ても、その過程が必ずしも理解や洞察を伴わない場合がある。ハイゼンベルクは、論理的な正当性と人間の直感的理解との間に隔たりがあることを率直に語っているのである。

特に量子力学の発展期においては、数式上の操作が正しい結論を導く一方で、その意味内容が直観的に把握できないことが多かった。観測問題や不確定性原理なども、形式的には証明可能であっても、人間の常識や感覚に合致しないため「暗いトンネルを抜ける」ような感覚を伴ったのである。ここには、物理学者としての葛藤と正直な実感が反映されている。

現代の学問や技術においても、この状況は繰り返される。AIのブラックボックス的な判断や、複雑な数値モデルによる予測などは、結果だけが得られても、その過程は理解不能であることが多い。この名言は、論理や数式が人間の理解を超えて進むときの不安や限界を鋭く言い表しており、我々が「結果」と「理解」の間で常に模索を続ける姿勢の重要性を示しているのである。

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