「相対性理論は高度に抽象的な思考能力を要求するが、それでもなお、世界を主体と客体(観測者と観測対象)に分けることを可能にし、したがって因果律を明確に定式化できるという点で、科学の伝統的要件を満たしている」

- 1901年12月5日~1976年2月1日(74歳没)
- ドイツ出身
- 物理学者、ノーベル物理学賞受賞者
英文
”Although the theory of relativity makes the greatest of demands on the ability for abstract thought, still it fulfills the traditional requirements of science insofar as it permits a division of the world into subject and object (observer and observed) and, hence, a clear formulation of the law of causality.”
日本語訳
「相対性理論は高度に抽象的な思考能力を要求するが、それでもなお、世界を主体と客体(観測者と観測対象)に分けることを可能にし、したがって因果律を明確に定式化できるという点で、科学の伝統的要件を満たしている」
解説
この言葉は、相対性理論と量子力学の哲学的違いを浮き彫りにしている。アインシュタインの相対性理論は時空や重力に関して極めて抽象的な理論であるが、それでもなお「観測者」と「観測対象」を区別することが可能であり、古典物理学以来の因果律を保持している。つまり、相対性理論は新しい枠組みを導入しながらも、科学の伝統的基盤を維持したといえる。
これに対し、量子力学は観測行為そのものが対象に影響を与えるため、主体と客体の分離が崩れる。不確定性原理や波動関数の収縮などは、従来の因果律を揺るがし、科学の哲学的基盤を根本から再考させるものとなった。ハイゼンベルクの言葉は、この対比を明確に意識したうえで、相対性理論がまだ伝統的科学観に留まっていることを強調している。
現代から見れば、これは二つの理論の「受容のされ方」にも関わる。相対性理論は当初こそ難解とされたが、やがて広く受け入れられた。一方、量子論は今なお解釈をめぐって議論が続く。相対性理論は因果律を守った理論革新、量子論は因果律を揺るがす理論革命である。この言葉は、その違いを端的に表現しているのである。
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